553:「蜜蜂と遠雷」読了

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記事548で浜松国際ピアノコンクールのことを書きましたが、恩田陸の「蜜蜂と遠雷」は浜松国際ピアノコンクールにぴったり照準をあて、コンクールの進行に合わせてコンクール出場者・審査員・聴衆のそれぞれの立場での心の動きを丁寧に描いていきます。
 553:「蜜蜂と遠雷」読了
そのコンクールに合わせて読むつもりだったのですが、遅れ遅れてコンクールはとっくに終わってしまった後から読み始めました。ちょうど「コンクールの復習をしているような感覚で読んでいました。

読んでいるうちに、作家はピアノをやっていたとしか思えませんでした。ひょっとしたらコンクールに参加していたのかも・・とも思いました。
そこでウィキペディアの恩田陸を検索すると、やはりピアノをやっていたと書いてありました。それに加えて作家は、何回も何回も浜松国際ピアノコンクールに足を運び構想を練ったような報道もありました。

この小説は浜松国際ピアノコンクールの副読本としても価値ありです。登場人物の心理描写も面白いですし、「音楽の高みに達する瞬間」の表記に至っては登場人物になったかのような心持ちがしてしびれました。

ただ、小説としては少し食い足りない感じもしました。作家の思い入れが多すぎて、登場人物は多数いるのですが、一人の人物を複数に書き分けているような感じがしましたし、書しいてあることは一つ一つ違っていても、受ける印象は同じような感じを持ちました。

しかも行動・心理描写のすべてを書き過ぎているので、読者として想像をする部分がないのです。言ってみればコンサートのラストでの残響・余韻がないのと同じで、少し残念でした。小説としては少し長すぎるかもしれません。

 遅読が身上がゆえに行間を想像するのが好きと書きながら行間がない文章を書く陶酔人



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