503:吉田博展(損保ジャパン日本興亜美術館)

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日本伝統工芸展の応募のため西船橋に行ってきました。例によって間際までドタバタしている関係で輸送搬入ができず、さりとて車で行くのも大変なので、皿を大きいBAGに入れて電車で行ってきました。三越の倉庫には全国の応募者が次々に駆けつけ、陶芸部門だけでも800点もの応募ですので、大きな倉庫には作品であふれていました。ため息が出ました。
今回もバタバタの為、応募作品の写真はありません。

その帰り道、新宿の「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」で「生誕140年 吉田博展」を見てきました。
 503:吉田博展(損保ジャパン日本興亜美術館)
記事491でも紹介したように2月に名古屋のボストン美術館でも吉田博の作品を見たのですが、晩年の「農家」を見られなかったことと図録が無かったことが残念だったのです。で、今回の展示は満を持してって感じです。

 503:吉田博展(損保ジャパン日本興亜美術館)
これを含めて写真は図録・パンフからの転載です。
「農家」は予測以上に小さい作品でした。サイズは普通の版画と同じなのですが、吉田博の作品には大判版画が多いので小さく感じられたのです。
それでも、農家の暗い内部からうかがわれる裏門(とおぼしき)の明るさが際立っていてNHKでの放映以上にインパクトがありました。何度も書きますが、「生に限る」って感じです。

 503:吉田博展(損保ジャパン日本興亜美術館)
吉田博自身が一週間かけて彫った「渓流」です。前にも書きましたが、44才を過ぎて版画をスタートさせ、49才からは自彫・自摺版画を主戦場に選んだ生き様がたまりません。

展示は8月27日までやっているので機会があったら見られることをお勧めする陶酔人

生き様・逸話などは、下段の「続きを読む」をクリックください。ながながとメモが書いてあります。


以下メモを記入します。

吉田博の版画の第一歩は、版元の渡邊庄三郎からの依頼でした。
 503:吉田博展(損保ジャパン日本興亜美術館)
時は明治神宮が完成した年で、寄付してくれた方々へのお礼の為に「明治神宮の神苑」という掛け軸を3000枚刷ったようです。
これを端緒に、版元からの依頼に飽き足らず、自刻・自摺りの版画に突入することになった・・・
浮世絵は10数回の摺りであることに対して、自刻・自摺りを徹底して30回以上摺って、精緻な写実性を出した・・・

版画なので、当然複数枚刷ったんでしょうが、摺師の苦労はいかばかりか・・・無論吉田博の思い入れに共感して摺ったには間違いないことでしょう。

福岡市美術館所蔵や個人の丸山精氏所蔵のものもかなりありました。
「千葉市美術館/個人」と書いてあるのは、多分千葉市美術館に寄贈された作品ということであれば、なんとも素敵な話しですね。
個人蔵のものは色が鮮やかなままなんですね!

作品ではありませんが、写生帖も徹底していて、写生帖とは思えない出来栄えです。
ずいぶん前になりますが、出光美術館で偶然見た「板谷波山のスケッチ」を連想しました。

ダイアナ妃が部屋に飾っていた「光る海」は無論のこと、「帆船」シリーズ、「山」シリーズ・・・すべてが展示されていたような感じでした。

戦後吉田博の家がGHQに接収されそうになった時、GHQに直接掛け合って収用を免れた逸話なんぞも、なんとも爽快です。

工房はんの木 木工ブログ」にも面白い関連記事が載っていました。

ながながお読みくださいましてご苦労さまでした。



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