792:「舟を編む」読了

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「舟を編む」(光文社文庫)を読了しました。2012年本屋大賞を受賞した作品の文庫版です。
 792:「舟を編む」読了

元来ヒット作品を避ける傾向の陶酔人ですが、「映画」「テレビ放送」の情報が目に入りついつい読んでしまいました。まずは「舟を編む」という題名がしゃれているではありませんか。辞書の編纂がテーマであることは脇情報で知っていましたが、読み始めて、即心を奪われました。

物語の進捗を補うように辞書を作ることの全体像がつまびらかにされていきます。作者三浦しおんは辞書編纂者ではなかったかと思うほどの入れ込みかたです。「採用語の取捨選択」「説明文のまとめ方」等は無論ながら「紙の選択」「抄紙機」などの製本過程の表記も詳しいのです。

辞書作りに15年の歳月をかけたの表記には多分実際の辞書も同様だろうと思われ圧倒されます。

以下ランダムに感想を記します。

仏典を中国語化した玄奘三蔵、青の洞門を掘った禅海和尚を例にとり、「・・どんなに少しずつでも進み続ければ、いつかは光が見える・・」との表記にある感慨を思い浮かべます。

「・・・死者とのつながり、まだ生まれ来ぬものたちとつながるために、ひとは言葉を生み出した・・・」の表記にも心打たれます。

辞書監修者の廊下や階段は「・・ひと一人がようやく通れる程のスペースしか残されていなかった・・・」の表記には親近感を持ちます。

「舟を編む」の舟は言葉を選ぶノアの箱舟でしょうか。

先輩からいただいた昭和40年印刷の岩波書店の広辞苑を持ち出しますと「広辞苑」の背表紙には「新村出編 広辞苑」と銀色のタイトルが刻印されていました。
この広辞苑は二千三百五十九頁(当時)でして、二千九百数十頁の「舟を編む」は広辞苑を意識しているのは当然のことでしょう。

文庫本の特典として「馬締の恋文 全文公開」が巻末に載っています。
恋文に挿入されている漢詩は難解で下段に注釈が載っていても判読できません。判読できなくても楽しめます。

  次々に次ぐを読めと積ん読の本に声をかけられている陶酔人




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