246:「天と地の守り人」読了(陶酔人)111027

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上橋菜穂子さんの「精霊の守り人」シリーズの完結編「天と地の守り人」三部作を読了しました。前作までで、万事休すの展開をどうまとめるか興味津々でしたが、やや楽観的な筋書きで大団円(?)にまとめたといった感じでした。冒険譚としてなら一級品ではないでしょうか。一方で国を統治する者の心構えも訴えているようですし、現在の為政者にこそ読んでもらいたいものです。
 246:「天と地の守り人」読了(陶酔人)111027

シリーズを読了したので、いよいよ録り貯めてあったNHK・BSのアニメ「精霊の守り人」を見ることにするつもりの陶酔人

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以下は、そもそも文学でも映画でもハッピーエンドを好まない天邪鬼の性格なるが故のたわごとと読み捨ててください。

「そうか、これは児童文学なんだ。純文学ではないんだ。」と読了直後に思った。それは、少なからず気にいってない自分がいて、自分自身を納得させるための理由を本能的に探していたんだと思う。そう思うほどエンディングは期待はずれだった。
というのも「天と地の守り人」といった大上段の題名をシリーズ最終版にする以上、いろいろな意味合いを想像をして読み進めてきたし、万事休す(万事窮す?)・八方塞りの展開をどういう風に完結させるのか興味津々だった。
題名・シリーズの流れから、「チャグムはナユグの力を得て国を守って、その恩返しもあり、もともと二つの世界に共存できる存在だったこともあり、ナユグの世界に渡り、彼の世界を守っていく存在になる」のではないかと想像していた。そうでないと、単なる「冒険譚」になってしまうのではないのかと。「冒険譚」がいけないわけではないが、それ以上のものを期待していただけに残念でならない。

一例をあげれば、一部・二部の導入部分でのもう一つの世界(ナユグの世界)の大変化を思わせるなんとも瑞々しい記述が、三部ではその大変化がこちらの世界に洪水を起こすということにまとめた点も気に入らない。ナユグの混乱はどうなったのかの表記が乏しいではないか!
そもそも「精霊の守り人」のタイトルが意味するところは違っていたのではないのか!チャグムはナユグを守るべき人材として選ばれし者だろうから、こちらの世界の民を救うと同時にナユグの世界の大混乱をも救う乃至関わるようにまとめるのではないかと思っていた。

そもそも「精霊の守り人」に入れ込んできたのは、なんとも不思議な世界をかもし出していたからだ。同空間を共有しつつも呪術師以外はお互いにその存在がわからないという設定で、その別の世界の存在がなんとも鮮やかに描かれていて、その二つの世界の同時進行の表記に完全に魅せられていたからだ。まさか主人公チャグムの冒険譚・武勇伝とチャグムの心理描写・行動を通して「まつりごと」を行うものの心構えを描きたかったわけではあるまいと思うのだ。

もう一人の主人公バルサのエンディングは、そこそこ予想通りだった。徐々に主役から脇役・引き立て役に代わってきたのもうなづける。

今振り返れば一作目の「精霊の守り人」に勝る作品はシリーズでは無かったと思う。「精霊の守り人」とシリーズではないが「狐笛のかなた」の二編が特筆される作品だと思う。

と入れ込んできただけに、本編の読了後の肩透かし感は無念でならない。
無論著者(上橋菜穂子さん)自ら児童文学と唱えているのに、純文学を期待している自分が愚かだとも思ってはいる。

これらの表記は何度読んでも書き直しても、気持ちが前に出すぎてそれがどうにも納まりが悪い。なんとも読みにくい文章になっているが、読後直後の心持を書きとめることの方を大切にした。

とはいえ、今まで十二分に楽しんできたし、記事142の本編+追記で書いたように、いろいろ触発されて考えさせられた面も多くて、いい時間を提供してくれた作者に感謝は当然ながらしている。

シリーズ完結篇を読了したこともあり、録り貯めたNHKのアニメをいよいよ見ることにしようと思う。
 http://www9.nhk.or.jp/anime/moribito/

本になるといついぐずぐず考えたり書きたくなる陶酔人



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