104:坂の上の雲(その1)(陶酔人)090727

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この秋NHKで放映される司馬遼太郎の「坂の上の雲」の原作を読了しました。なんと、文庫本(文春文庫)で全8巻なんです。
 104:坂の上の雲(その1)(陶酔人)090727

明治の初期~半ばに活躍した、秋山兄弟・正岡子規にスポットを当て、
名誉も富も求めず、現状を打破すべく、まさに死線を乗り越えての生き様を丁寧に描ききっていました。
中でも、秋山兄弟の「持ち駒の無い」中での采配ぶりに光をあてていまして、今でいう、楽天イーグルスの野村監督のような存在でしょうか?!
 104:坂の上の雲(その1)(陶酔人)090727

NHKは、「白洲次郎」「坂の上の雲」などを通して、今の政治・経済の体たらくを嘆きつつ、エールを送っているように感じられてなりません。
 http://www9.nhk.or.jp/drama/dramalist/sakanoue.html

陶酔人

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(字ばっかりです。)
作家は作品でのみ評価されるわけで、わたしの評価は〇なんです。が、あえて、ここでは△のところも書きます。

秋山兄弟の先見性と実行力は無論ながら、兄好古の清貧な暮らしぶりが好感もてました。まさにやせたソクラテスのようで、家具も無く茶碗はひとつしか持ってなく、おかずも沢庵だけだったらしいことや、天才参謀の弟真之が戦後魂の抜け殻になったことなど、新渡戸稲造の「武士道」が書かれた時代だったことを思い出しながら、実に気持ちの良い人物像に触れた気がしました。

そうして超感動して読みつつ、作家司馬遼太郎の下準備・下調べの膨大さが文章に現れていて、それに圧倒されていました。
明治維新のころの無名人の活躍・ロシア帝政の没落~社会主義の台頭・調停役のアメリカ大統領ルーズベルトの対応・ヨーロッパ列強の対応具合・・まで調査していて、特に日露戦争のロシア側の作戦・心理描写などは、どうやって調べたものだろと思わずにはいられなかったものでした。

その膨大なる調査資料をもとの小説は、切り口鋭く、どんどん読み進みたい心と一字一句を読み飛ばすまいという心とが葛藤しつつ約2ケ月かけて読了しました。

小説として読み進む内に、主題から離れての挿話がやや多すぎると感じだしました。作家の思い入れとしては、挿入せざるを得ない心境なのでしょうが、その思い入れがやや主題の雰囲気を壊しかねない冗長さにつながると思わずにはいられませんでした。歴史文学はそういった挿話にこそ面白さがあるのかもしれませんが、純文学好きにはやや間延びした感じがしました。無論、ドストエフスキーの「カラマーゾフ兄弟」などでも劇中劇もあって、その長さに時に戸惑うこともあるのですが、「坂の上の雲」には、挿話が多すぎたのです。

一番気になった点は、「そのことはすでに触れた」の表記の頻発です。それだけ言いたいことを幾度となく繰り返す表記が多かったのです。作家はそれを多少気にしつつも、それでもなお書かずにはいられないという思いのたけがにじみ出ていました。読み手としては、そこまで分かっていても、その繰り返しに少なからず食傷気味になりました。3巻以降は、やや違和感を感じていました。

と言いながら全体としては十分に〇だったのです。この作品に出会うきっかけを作ってくれた知人とNHKに感謝です。

今年秋に5回、来年4回、再来年4回にわたり放映されるようです。連載物は一時に見たいものなので、残念ですね。そういえば白洲次郎の第3回目(完結編)も9月23日にやっと放映されるようです。ちょっと日がたってしまっています。
 http://www.nhk.or.jp/drama/shirasujirou/html_shirasu_story.html

陶酔人



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